
脳の早送り機能にだまされないために 僕らの学習帳 vol.064
接近と回避の法則という、シンプルな行動原理があります。快楽や報酬を予測できるものや人物には接近し、不快感や失敗・マイナスになると信じるものや人物は回避します。
好きな人には近づきたいし、嫌いな人からは離れたい。好きな食べ物はよく食べるし、嫌いな食べ物は食べずに残す。褒められればがんばるし、怒られるとやる気をなくす、という話です。
さらに言えば、ポジティブなものに対して、人は積極的に行動を起こしますが、何かネガティブなことが想像されると、人は行動をやめてしまいます。
だから、ちゃんと手を洗いなさいといくら叱っても、子どもが動いてくれなかったり、なんで遅刻するんだと注意しても、遅刻がなくならなかったり。
さらに言えば、いくら未来の恐怖を伝えても、全く響きません。
怪我をするからやめなさいといっても、虫歯になるから歯を磨きなさいといっても、今のうちに勉強しないと間に合わないよといっても、不幸をチラつかせたところで、人は動いてくれないのです。
僕らはみんな、「未来のムチ」を無視することがとても上手です。それなのに、私たちはついつい「未来のムチ」を使って、他人に注意しようとしてしまいます。
僕らは「未来のムチ」に効果がないことを身をもって知っています。それでも、使いたがってしまうのは、脳の中に「自動早送り機能」がついているからです。
しかも、この早送り機能は、相手の悪い結果ほどよく働いてしまいます。
冬場にTシャツだけで遊びに行こうとする娘に対して、鼻水をたらして苦しそうな姿を想像してしまったり、夏休みに宿題をしていない息子に対して、宿題が終わらなくて泣いている姿を想像してしまったり。
いろんな場面で自動的に早送り機能は作動しています。それも積極的に。
でも、その悲しい未来を伝えても、相手に伝わらないことは、すでに述べました。だから、せめてメッセージをポジティブに変換するのです。
コートを着れば、もっとたくさん遊べるとか、いま一緒に宿題をしたらおやつを食べられるとか。
そんなふうにポジティブなメッセージに変えることで、回避の法則から、接近の法則へと変更できるようになります。
自動的に起きてしまう早送り機能に気づいたら、そこから一歩立ち止まって、接近の法則にどうやったらメッセージを変換できるか、考えてみると相手の反応も変わってくるかもしれません。ぜひ一度試してみてください。
今回の僕らの学習帳は、「事実はなぜ人の意見を変えられないのか」の3章の「快楽で動かし、恐怖で凍りつかせる(インセンティブ)」から、お話ししました。
今回の話について、もっと詳しいことを知りたい人は、動画・音声をぜひご覧ください。
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