
事実で意見は変えられない 僕らの学習帳 vol.061
事実は人の意見を変えられない。これは紛れもない事実です。もしかしたら、誰にも経験があるかもしれません。誰かを説得したくてたくさんの情報を調べて話をするんだけれど、なぜか信じてくれない、耳を傾けてくれない。
それは、相手の理解力や自分の情報の集め方が悪いのではなくて、そもそも、人は、「事実」では意見を変えないということなのです。
その分かりやすい例として、筆者は、2015年に行われた共和党の大統領候補者討論会の様子を上げています。登場するのは、不動産王のドナルド・トランプと神経小児科医のベン・カーソン2人。
ポイントは、ワクチンを打った子どもは自閉症になってしまうかどうか。
ベン・カーソンはたくさんの実験と論文がその関係性を否定しています。ワクチンを打ったとしても自閉症にはなりません、と主張します。
それに対して、ドナルド・トランプはこう反論します。
「私に言わせてもらえるなら、自閉症は今や流行病ですよ・・・小さな可愛らしい赤ん坊を連れてきて、注射をする 子供用なんかじゃなくて、その注射器は馬に使うようなばかでかいものに見える。つい先日二歳の子が、二歳半の可愛らしい子供が、ワクチンを受けに行った一週間後に高熱を出しました。その後ひどく悪い病気になり、いまでは自閉症です。」
これに対して、ベン・カーソンは知性での反論を繰り返します。ワクチンが原因になった自閉症などないことは、立証されています、と。
このやりとりを実際に見ていた筆者は、一瞬パニックに陥ったそうです。もしうちの子が自閉症になったら、と。そして、その直後、自分が影響力の力学によって、トランプにコントロールされていると気づいたのでした。
これがまさに、事実で人の意見は変えられない、証拠となってしまったのでした。
人々の知性に訴えかけようとするベン・カーソンに対して、ドナルド・トランプは人々の感情に、とくに恐怖に訴えかけました。この恐怖の影響はあまりにも強く、私たちの行動すら変えてしまいます。
この本を通して、影響力とはどのように強めることができるのかのお話をして行きますが、それは決してトランプのやったように、悪い影響力を推奨するものではありません。
ワクチンと自閉症の関係が無いことについて、ベン・カーソンが強い影響力を持って伝えることができなかったことを改善する方法として、書かれています。
そのために、人の頭の中でなにが起きているのか、自分の脳はどのような判断を下しているのか、そういったことを次回以降で、お話ししていきたいと思います。
今回の僕らの学習帳は、「事実はなぜ人の意見を変えられないのか」のはじめに「馬用の巨大注射針」から、お話ししました。
今回の話について、もっと詳しいことを知りたい人は、動画・音声をぜひご覧ください。
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