
消費社会から経験社会の変化のまっただ中で 僕らの学習帳 vol.016
飛行機をデザインする、ボールペンをデザインする、オフィスチェアをデザインする、などのように、デザインするという言葉は、基本的にモノに大して使われます。
そして、そのものの外観をどう良いものにするのかを考えるのがデザインの仕事だと考えられています。
それに対して、デザイン思考が対象とするのは、「経験」です。
さっきあげた、飛行機、ボールペン、オフィスチェアの例を使うならば、このようになります。
飛行機を乗っている間の顧客の経験をデザインする
ボールペンを使っているときの経験をデザインする
オフィスチェアに座って仕事をしている従業員の経験をデザインする
この、モノに意識を向けているときに生まれてしまいがちなのが、見た目にはキレイだけれど、機能的には使いにくいモノです。
それに対して、経験全体に意識を向けている場合は、そのモノと人との関係性をデザインすることになるので、デザインする目標が大きく変わってきます。
なぜこのようにデザインからデザイン思考へと変化していく必要があるのか、というと、それは時代がそれを求めるようになっているからです。
産業革命によって、世の中は消費社会となり、僕らは消費者と呼ばれる存在となりました。製品やサービスをお金を払って、消費する者という意味です。
そうすると、僕らは自分の存在を示すための最も便利な方法が、消費であると思うようになります。モノを買う、使うことによって、自分を表現するのです。
どんな服を着て、どんな音楽を聴いて、どんな本を読んで、どんな食事をして、どんな家に住んでいるのか。これらの消費によって、僕らは自分が誰であるのかを説明することができるようになったのです。
この時代は、どんどんと加速していき、20世紀後半には大量消費社会と呼ばれるまでになりました。つまり、大量に消費する社会であり、僕らは大量のモノやサービスを消費しては自分を表現していったのです。
ただ、この表現はとても受動的なものです。与えられるものを受け取り、消費するという表現です。
僕らは今現在、この時代から抜け出そうともがいています。つまり、受動から能動への変革です。
消費するのではなく、自分たちで創り、経験しようというのです。
たとえば、音楽でも、かつては、ラジオ・レコード・CD・ウォークマンで聴くことが唯一の楽しみ方でしたが、そこから、自分で創り、歌う、発表するということが、簡単にできるようになってきました。
それは、音楽だけでなく、文章も、映像も、ありとあらゆる分野でその傾向は加速していっています。
僕らは、いま経験を求めているのです。
消費文化から、経験文化という大きな時代の変化の中に僕らは生きているのです。
このときに必要なものが、消費されるモノやサービスをデザインすることではなく、デザイン思考によって、経験を自らつくりあげるという行為なのです。
今回の僕らの学習帳は、「デザイン思考が世界を変える」の第5章「初心にかえる」から、お話ししました。
今回の話について、もっと詳しいことを知りたい人は、動画・音声をぜひ聞いてください。
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