
Warby Parkerの9回のメールの秘密 僕らの学習帳 vol.054
今回のテーマは、「他人」ではなく「友人」に売るということですが、D2Cが販売する相手は、もちろん他人ですが、その他人を「友人」のように扱えるかどうかがポイントとなってくるのです。
ここでは、Warby Parkerというメガネブランドを紹介します。このブランドの登場以前は、メガネのオンライン販売など不可能だと考えられていました。
試着・レンズの調整・視力検査など、メガネの購入にはたくさんの手続きが必要だからです。これらをオンラインでやろうと思ったら、ブランドにもお客さんにも負荷がかかります。
特に、お客さんは、試着したメガネの返送、視力検査の証明書の提出など、お見せだとその場で店員さんがやってくれるようなことを自分でやる必要があります。
そこまでして、メガネをオンラインで買う必要はない、そう考えられていました。
その考えをくつがえしたのが、Warby Parkerです。それを可能にしたのが、逆転の発想から生まれた、Home Try-Onというサービスでした。
自宅で試着して、気に入ったものは購入、気に入らなければ返送できるサービスです。
最大で5個のメガネをオンラインで注文します。
そうすると専用のボックスに入ったメガネが、自宅に配送されます。
このメガネを受け取ったら、5日以内に試着して、返送用ボックスに入れて返却。購入の場合は、眼科で受け取った診断書などを添付。
ちなみに、受け取った人たちは、自分がメガネを試着した様子を、#warbyhometryonというハッシュタグでSNSにアップしています。
そうすると、これを見た友人たちが、どれがいいのかを投票して会話が盛り上がっていくのです。
実際のメガネやさんに友人と行った時に、いくつも試着して遊んだこと悩むプロセスを世界中の人たちと共有できるのです。
そして、その後に、ウェブサイト上で購入手続きに進みます。
このような流れになっております。そして、この一連のプロセスのなかで、Warby Parkerは、9回ものメールを顧客に送ります。
この9回のメールという言葉だけ取り上げると、わずらわしさを感じるかもしれませんが、これは業務連絡でもプロモーションのメールでもありません。
すべてのメールが、お客さんがメガネを楽しめるように、サポートできるように書かれたものです。
ただメガネの到着のお知らせをするのではなく、そのなかでスタッフのお気に入りの一本がどれかを伝えてみたり、悩んでいるような時には試着を楽しめるようなメッセージを伝えてみたり。
押し売りではなく、お客さんがメガネを楽しめるように、ということに徹底しているのです。
これが、Warby Parkerの行った発想の転換です。メールでなんども連絡することは、お客さんにとってわずらわしいという考え方から、友達からメガネについてのアドバイスや励ましが来ることはうれしいと。
この9回のメールを、友人と話せる大切な時間と考えたのです。
この発想の転換によって、いままで不可能と考えられていたオンラインでのメガネの販売が可能となりました。そこにあったのは、「友人」にメガネをすすめる温かいメッセージで満ち溢れた9回のメールだったのです。
今回の僕らの学習帳は、「D2C 「世界観」とテクノロジー」で勝つブランド戦略」の第3章「「他人」ではなく「友人」に売る」の前半から。(D2Cとは、Direct to Consumer(顧客への直接販売)という業務形態を表す言葉です)
今回の話について、もっと詳しいことを知りたい人は、動画・音声をぜひご覧ください。
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