
ユビキタスは始まったばかり 僕らの学習帳 vol.036
ユビキタスという言葉は、コンピューターやネットワークがあらゆるところでつながっている状態、「遍在」という状態をさす言葉です。
つまり、現代のように僕らはどこにいても携帯電話でネットワークでつながり、欲しい情報を検索し、好きな人と会話をし、欲しいものを購入し、(もちろん販売も)映画を見て、本を読み、ライブ放送を開始することができる。
今ではわざわざいうまでもなく、当たり前のものになってきている一方で、ユビキタスを活用しきれていないのも事実かもしれない。
たとえば、クラウドソーシングというシステム。
仕事を社外やプロジェクトの外の人間にアウトソースすることを言いますが、一般的なイメージとしてはそれほど複雑ではない仕事を頼み、引き受けるもののように思われているかもしれません。
しかし、実際のクラウドソーシングの能力はもっと素晴らしいものなのです。その能力をzんぶんに発揮させたプロジェクトの1つが、FANGと呼ばれたクラウドソーシングプロジェクトでした。
FANGとは、Fast, Adaptable, Next Generation Ground Vehicleの略で、簡単に訳すなら、速くて適応性が高い、次世代型の戦闘車両です。アメリカ国防総省の頭脳とも呼ばれる、DARPAという研究機関が、この戦車の設計や動力の開発を、クラウドソーシングしたというのです。
これだけを聞くと、機密情報の漏洩に対する心配はもちろんのこと、クラウドソーシングするほど適切な人材が外部に存在しないかもしれないとも考えられます。
しかし、このような懸念をよそに、このプロジェクトはうまくいきました。しかも費用対効果としても、研究の結果としても十分に成功と言えるものだったのです。
なぜ、このような複雑そうに見える課題が、クラウドソーシングできたのか。そのポイントは、文脈からの切り離しでした。
DARPAは、戦闘車両の設計を、軍事的な文脈から切り離して、さらに、適切な大きさの課題に切り分けることに成功したのです。
その結果、課題として出されたのが、動力伝達装置、車体、そして最後が車両全体でした。
たとえば、動力伝達装置の開発には、必要な動力の大きさや種類がわかっていれば、軍事的な作戦の内容や使用される環境を把握する必要はありません。極端な話、軍事的な知識はなくても構わないのです。
その結果、動力伝達装置を開発する能力はあるが、軍事的な知識や能力を持っていないがために、DARPAと関わらなかった人々が、このクラウドソーシングに殺到したのでした。
このように、課題を解きやすい大きさに切り分けること、そして、文脈から切り離すこと、この2つをうまくやることができれば、クラウドソーシングの環境はもっと活用できるのです。
それを象徴する端的な一言がこの本の中に書かれています。
「よく説明されている問題は、半分解決している」と。
今回の僕らの学習帳は、「LEAP ディスラプションを味方につける絶対王者の5原則」の第4章「ユビキタスな環境を味方につける」から、お話ししました。
今回の話について、もっと詳しいことを知りたい人は、動画・音声をぜひ聞いてください。
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