
僕らは絵画のなにを見ている? 僕らの学習帳 vol.107
「窓」と「床」の違いってなんだと思いますか?
この2つの違いを聞かれても、同じものの方が少ないので、答えるのが難しいです。でも、この質問の答えが、新しいアートを生み出したのです。
その新しいアートが、ジャクソン・ポラックの「ナンバー1A」という作品です。
今までの絵画がずっと「窓」だったとしたら、「床」としての絵画の可能性を開いたのが、ジャクソン・ポロックでした。
今までの絵画を見ている時、絵画そのものを見ていません。見ているのは絵画によって表現されたイメージです。それが具象でも抽象でも関係なく、僕らは絵画によって描かれたイメージを見ています。
貴族の肖像画を描いているなら、その貴族の顔を見ますし、田園風景の絵画はその風景を見ます。当たり前です。絵画とは何かイメージを描いたものです。しかし、それによって、僕らは絵画そのものを見ることができなくなっています。
肖像画を描いているキャンバスの生地自体を見ることはないし、田園風景の絵画に付けられた絵具の盛り上がりに注目することはありません。つまり、いつだって、キャンバスの上に塗り付けられた絵具が集まって完成するイメージを見ているのです。絵画自体を見てはいないです。
それは、僕らが窓を見ている時の態度と同じです。窓を見てください、と言われて、そのガラスを見る人はいません。いつだってその向こうにある風景(イメージ)を見ています。
これに対して、床は違います。床を見ると、床材やその上の汚れや傷などが目に着きます。床自体を見ることができます。
ジャクソン・ポロックの絵画は、まさに「床」でした。なにを描いているのか、と考えるのではなく、絵筆が動いた様子や絵具の盛り上がり、キャンバスに残った足跡などが見えてきます。
これこそが、目の前にある絵画が、初めて絵画自体になれた瞬間でした。何かイメージを伝える媒体であることをやめて、物質としての絵が誕生したのです。
この絵の誕生にも、アート思考が関わっています。つまり、僕らはなにを見ているのだろう?という好奇心で生まれたのが、この「ナンバー1A」だったのです。
今回の僕らの学習帳は、「13歳からのアート思考」のCLASS5「私たちの目には「なに」が見えている?」から、お話ししました。
今回の話について、もっと詳しいことを知りたい人は、動画・音声をぜひ聞いてください。
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